腸内フローラ Tレグは深い関係

腸内フローラとTレグ(制御性T細胞)の関連性

 

腸内フローラとTレグ 
「出典:NHKスペシャル」

 

最近、健康との密接な関係が解明されてきた「腸内フローラ」と、腸でつくられアレルギー反応を抑える働きがある「Tレグ細胞」の関連が注目されてきました。

 

そして、腸内フローラとアレルギーの関係について研究が始まっています。

 

Tレグ細胞の正式名称は「制御性T細胞」といい、英語表記では「regulatory T cell」です。regulatoryは制御とか調整の意味があります。

 

Tレグは1995年に大阪大学の坂口志文教授らが発見した免疫細胞でT細胞の過剰反応を制御してアレルギーや自己免疫疾患の発症を抑えて制御する働きがあることが分かり、アレルギー治療のカギを握る存在として注目されるようになりました。

 

 

 

Tレグの主な働き

 

免疫細胞には細菌やウイルスの攻撃を指示するTh1(1型ヘルパーT細胞)とアレルゲンに反応して様々なアレルギーを引き起こすTh2(2型ヘルパーT細胞)とがあります。

 

例えば、Th1が過剰に働くと免疫が自分自身を攻撃する膠原病や関節リュウマチなどの自己免疫疾患が起こりやすくなり、逆にTh2が過剰に働くとアレルギーが起こりやすくなります。

 

つまり、私たちの体内には自分自身の臓器や組織を異物とみなして攻撃する自己反応性の免疫細胞が存在しています。これらの異常な攻撃が自己免疫疾患を引き起こすことになります。

 

Tレグ細胞は自分自身を攻撃する免疫細胞を封じ込めて「攻撃中止」を命令する役目をしている免疫細胞です。

 

また、花粉症や食物アレルギーなどは体に害のないたんぱく質に対して免疫細胞が過剰に働くため炎症などのアレルギー症状が起こります。Tレグ細胞が正常に働くことで「攻撃中止」を命令することで症状が治まります。

 

以上の様に調整役をしている免疫細胞がTレグ細胞なのです。

 

このTレグの働きは「免疫寛容」と呼ばれ特に腸管などの消化管で発達しています。

 

 

 
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Tレグに期待されている治療分野

 

自己免疫疾患

 

膠原病や関節リウマチ、1型糖尿病、クローン病などの自己免疫疾患ではTh1が過剰に働いているため、体内にTレグ細胞を増やして免疫力を維持しながら病気の原因になっているT細胞だけを抑え込むことで改善することが解明され既に臨床試験が開始されています。

 

臓器移植

 

臓器移植では、移植される他人の臓器を異物と判断して免疫機能が拒絶反応を起こします。この拒絶反応を止めるようにTレグを移植する臓器と一緒に体内に入れる治療法が既に実用化しています。

 

Tレグ細胞はがん細胞の攻撃を邪魔する働きも

 

体内では毎日数千のがん細胞が発生しているといわれています。通常T細胞は、がん細胞を見つけ次第攻撃してせん滅しています。

 

この時にT細胞が、がん細胞をせん滅した後も攻撃を続けて自分自身の正常な細胞まで傷つけてしまいます。

 

この時に働くのがTレグで「攻撃中止」のシグナルを発して攻撃を止めさせる働きをしています。

 

がん細胞はこのTレグの他の免疫細胞の働きを制御する力を利用する悪知恵と巧妙な仕組みを持っています。

 

その仕組みは、がん細胞はT細胞からの攻撃を逃れるためTレグを取り込んでコントロールしT細胞にがん細胞を攻撃を中止する様に仕向けます。

 

つまり、T細胞が誤った攻撃をしているとTレグに情報を与えT細胞の攻撃を止めさせてしまうのです。

 

このままだと、がん細胞が増殖して大きくなってしまいますが、対抗する薬の研究も進んでいます。

 

がん細胞にコロトロールされたTレグの働きを止めることでT細胞が、再びがん細胞を攻撃する働きを復活させてがん細胞を壊滅させる薬が開発されています。

 

治療が困難と言われていた肝臓がんや腎臓がん、メラノーマなどの治療に目覚ましい成果をあげています。

 

以上の様にTレグの働きを強めたり弱めたりしてコントロールすることで、自己免疫疾患やがんの治療が飛躍的に改善しています。

 

しかもTレグは、間違った攻撃をしているT細胞だけを特定して抑え込み免疫全体には影響を与えない非常に優れた免疫細胞です。

 

 

 
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「フィーカリバクテリウム」はTレグ細胞を増やす

 

アレルギー疾患を発症する子どもは、アレルギー症状を起こさない子どもに比べ腸内フローラの多様性が低いことが明らかになりました。

 

腸内の善玉菌は、食物繊維やオリゴ糖をエサにして、副産物として酢酸や酪酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸を産生します。

 

善玉菌の仲間で「フィーカリバクテリウム・ プラウスニッツィ」と呼ばれる菌が腸内フローラに大量に存在すれば、ビフィズス菌が少なくても、抗炎症作用やクローン病、潰瘍性大腸炎の再発防止に有益だと考えられています。

 

また、アレルギーと関係していることが報告されています。

 

この腸内細菌「フィーカリバクテリウム・ プラウスニッツィ」は、アレルギー反応を抑える作用を持つ「Tレグ細胞」を増やす「酪酸エステル」を産生していることがわかっています。

 

腸内フローラに、善玉菌のフィーカリバクテリウムを保有していない人は肥満や大腸がんなどの病気になりやすいことも明らかになりました。

 

また、クロストリジウム属の菌種に「Tレグ細胞」を増やして腸内の免疫バランスをとる働きがあることが分かり注目されています。

 

参考までにクロストリジウム属には、偽膜性大腸炎の原因となるディフィシル菌やボツリヌム菌などの生体に有害な菌もあります。

 

免疫とアレルギー/Th1・Th17・Th2・Tレグ細胞のバランスが大切 

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